前回は発達障害と子育てに関し、親が発達障害の子を受け入れるための心の問題を取り上げました。今回は、子育てのより具体的なアドバイスについて、キャリアカウンセラーの方の話をご紹介させていただきます。
引っ越しや合宿で環境を変え、生きづらさを減らしていく
発達障害の問題は周囲の環境にも大きく左右されます。例えば、発達障害に理解のある学校とそうでない学校、あるいは理解のある先生がいるかどうかで、子どもの置かれる状況は大きく変わってきます。周囲にいる人達が発達障害に対して差別や偏見を持っていると、家族も子ども自身も生きやすい環境とは言えないでしょう。
そういった場合、「思い切って引っ越す」のも選択肢のひとつです。環境を変えることで人間関係を変えることもできますし、都心へ出ていけば人口が多いぶん、相談先の専門家などの選択肢も増えたりします。
また引っ越しとは言わないまでも、発達障害児を対象とした合宿などを利用するという方法もあります。合宿に参加することで普段の生活から離れ、気分転換をするのもよいでしょう。
ただ、合宿の中にもビジネス目的の高額な料金を取るようなものや、怪しいものもありますので、行政が案内しているものを選ぶなど、安心できるところを探すよう注意してください。
子育ての愚痴や悩みはSNSではなく専門家に話そう
「環境をすぐに変えることはできない、だけどストレスは溜まっている」という方もいらっしゃると思います。子どもが発達障害の場合、近所付き合いなどの人間関係や子育てそのものの悩みなど、ストレスの原因になるものはたくさんあります。そんな時、ついつい愚痴をSNSなどに書き込んでしまう人もいらっしゃるかもしれません。
しかし、SNSに書き込むだけでは現状の悩みは改善しませんし、また他人のネガティブな書き込みを目にするのもよくありません。また発達障害はケースバイケースなことが多いため、他人のケースが参考にならないことも多く、間違った情報に振り回される危険もあります。
そこで、カウンセラーなどの専門家に話を聞いてもらうという方法をおすすめします。専門家は各家庭の状況にあわせたアドバイスをくれますし、親の悩みを整理し、根本的な解決につなげやすくもなります。
SNSへの書き込みはおすすめしませんが、悩みを抱えて孤立するのはもっとよくありません。不安なことや悩みがある場合は専門家に話を聞いてもらい、問題が起きたらそのつどアドバイスをもらいましょう。
思い込みが選択肢を狭めていることも。視野を広げて柔軟な対応を
「引っ越しをする」「合宿に参加する」「専門家に相談する」などの方法をご紹介しましたが、いずれも人によってはハードルが高く感じ、そう簡単には実行に移せない場合もあると思います。さらには、状況や思い込みによって「そんなこと思いつきもしない」ということもあるでしょう。
例えば「せっかく家を買ったのに引っ越すなんて」と考えたり、「いきなり引っ越せば仕事に支障が……」と考えたりする場合もあると思います。しかし、そうした考えが「引っ越す」という発想自体にフタをし、選択肢を狭めてしまっている場合も少なくありません。
子どもが偏見からいじめを受けている場合などは、「とりあえず様子を見よう」などと言っているあいだに病気になってしまうことも考えられます。また、子どもが我慢の末に自ら命を断ってしまう可能性も無いとは言えません。
親のほうが今の生活を変えたくなくて「環境を変えたり選択肢を増やしたりすることはできない」と強く思い込み、膠着状態が続いているということはよくあります。逆に言えばそういったことに囚われない柔軟な対応ができる家庭の場合は、発達障害の子育ては大変であっても、不幸ではないことが多いです。
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