アスペルガー症候群と就職について。発達障害の方が抱える問題

アスペルガー症候群 就職

「アスペルガー症候群」という言葉をご存じでしょうか。近年になって急速にメディアなどで取り上げられるようになり、耳にする機会が増えた方もいらっしゃると思います。しかし、実際はそれがどういった症状なのか、そしてアスペルガー症候群などの発達障害を持つ方々がどのような問題を抱えているのかということについては、あまり知られていないのではないでしょうか。

今回は、発達障害を含むさまざまな問題を抱えている人の就労支援を行ってきたキャリアカウンセラーの方に、「アスペルガー症候群と就職」についてお話を伺ってきました。

空気が読めない「ASD」と忘れ物の多い「ADHD」

発達障害という言葉は個別の疾患ではなく、アスペルガー症候群や自閉症を含むASD(自閉症スペクトラム障害)や、ADHD(注意欠如多動性障害)などを指した総称です。

アスペルガー症候群の特徴は、他人の情緒を理解するのが苦手なこと、それによってコミュニケーション上のトラブルが生まれやすいことが挙げられます。言葉をそのままの意味にとってしまいやすく、いわゆる「空気を読む」「察する」などといったことができないケースが多くなっています。

また、特定の対象や行動に強いこだわりを持ち、同じことを繰り返す行動パターンを取る傾向もあります。

ADHDの特徴は「注意欠如多動性障害」という言葉の通り、不注意によって忘れ物が多い、ケアレスミスを頻発するなどが挙げられます。また「多動性」「衝動性」が強く、特に子供時代は「授業中じっとしていられない」というような形で症状が出やすい傾向があります。

「アスペルガー症候群」に対する世間の偏見

発達障害の方が就職や仕事上の相談に来られることはよくありますが、ADHDなどの方よりも、アスペルガー症候群の方が来られる割合が圧倒的に多いです。

アスペルガー症候群の方からの相談が多い理由は、コミュニケーション上のトラブルが起きやすいということとは別に、世間のアスペルガー症候群に対する偏見が関係していると思われます。

「アスペルガー症候群」という言葉が最初にメディアによって大きく取り上げられたのは、犯罪事件の報道でした。そのためアスペルガー症候群はネガティブな印象を持たれることが多く、周囲の人や時には家族からさえ、「何か問題を起こしてしまうのでは」と偏見や差別を受けてしまっているケースも存在します。

一方ADHDは、メディアにおいてアスペルガー症候群のようなネガティブな取り上げられ方をしなかったこともあり、当事者やその家族も受け入れやすいことが多いです。また、ADHDはメモの取り方を工夫することで物忘れを防ぐなど、比較的仕事上の悩みをカバーしやすい部分もあります。

就職したときに表面化する「アスペルガー症候群」

アスペルガー症候群は、幼いうちに症状に気付きコミュニケーションの仕方をトレーニングすることで、社会で順応しやすくなっていきます。トレーニングを始めるのは早ければ早いほど良いと言われていますが、中には大人になるまで症状自体が気付かれないケースも少なくありません。

なぜ気付かれないかと言うと、学生などのうちは周囲からも「変わり者」「そういうキャラ」と思われる程度で、それほど大きなトラブルにならずに済む場合もあるからです。しかし学生時代には目立ったトラブルがなかった方でも、就職した途端に問題が発生するケースは少なくありません。

ただし、コミュニケーション面でトラブルが多いからといって、すぐにアスペルガー症候群だと判断できるわけでもないため、余計に問題は複雑化します。

もし、アスペルガー症候群であることに気付いていない方がキャリアカウンセリングに来られたとしても、キャリアカウンセラーは相談者に「アスペルガー症候群ですね」とは言いません。

キャリアカウンセラーは医師ではないため、相談者を診断することはできないからです。「そうかもしれない」と思った場合には、類似したアスペルガー症候群のケースを紹介して、医師に相談することを勧める程度のことしか言えないのです。

コメント

タイトルとURLをコピーしました